片頭痛について

片頭痛のイメージ写真

頭痛は、日常生活において非常に多い症状の一つです。
頭痛は大きく1次性と2次性に分かれます。1次性頭痛は片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などで頭痛自体が問題となるもので、2次性頭痛はくも膜下出血や脳腫瘍などのほっておくと大変なことになる病気が原因の頭痛です。従って、頭痛の治療はまず2次性頭痛を除外診断することが最も大事です。
当院は小さなクリニックですが 1.5T MRIを設置しており脳と脳血管の詳細な検査が可能です。

さて1次性頭痛であってもその程度は個人個人、またその時その時で様々で、たかが頭痛といえないことも多く、寝込んでしまって仕事・家事に影響していることもよくあります。
近年、片頭痛に関して研究が進み、新しい治療薬が多く登場しています。
片頭痛治療薬は、痛いときに服用する急性期治療薬と、片頭痛発作を減少させる予防薬に大きく分かれます。

片頭痛の治療薬と予防薬について

1.急性期治療薬

一般にアセトアミノフェンやバファリンなどの非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)がよく使用されていますが頭痛が軽度の場合を除いて効果は限定的です。
トリプタン系薬が登場して以来中等度以上の頭痛にはトリプタンが第1選択となっています。
現在、三叉神経終末から放出されるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide; 以下CGRPと略します)やサブスタンスPが片頭痛発作に密接に関連しているとされています。
トリプタンやラスミジタンは三叉神経終末のセロトニン受容体に働きかけ三叉神経終末からのCGRPやサブスタンスPの放出を抑制するとされています。
このようなトリプタンなどの急性期治療薬は具体的には、錠剤ではスマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ラスミジタン(レイボー)が本邦では保険適応となっています。
スマトリプタンには注射薬や点鼻薬もあります。
もちろん当院ですべて処方可能ですし、片頭痛発作で当院に駆け込まれた方のためにスマトリプタンの注射薬も常備しています。

2.予防薬

トリプタン系薬は非常に有効性の高い片頭痛治療薬なのですがその乱用は反対に薬物乱用頭痛を誘発するとされています。
片頭痛発作の頻度・重症度・頭痛持続時間の軽減などのため片頭痛予防薬も各種開発されています。
3ヶ月以上にわたって片頭痛発作が月に4日以上生じた患者さんは予防療法を考慮することが勧められます。
ただ予防薬それぞれで様々ですが、予防療法の効果発現には時間がかかり予防療法は副作用がない限り最低3ヶ月は継続することが勧められています。
予防療法に用いられる薬剤には次のようなものがあります。

i) Ca拮抗薬=ロメリジン(ミグシス)

脳血管に選択的拡張作用があると言われています。
投与8週間後には64%の患者で片頭痛発作の頻度・程度の軽減が期待できるとされています。

ii) バルプロ酸

神経の興奮性を抑制することから以前から以前から検討され、海外の片頭痛治療ガイドラインではレベルAで推奨しているものもあります。
ただ妊娠中および妊娠の可能性のある女性には使用できません。

iii) β遮断薬=プロプラノロール

β遮断薬は高血圧、冠動脈疾患、頻脈のお薬として広く用いられていますが片頭痛の予防薬としても有用性が科学的に示されています。
トリプタンの使用しにくい冠動脈疾患をお持ちの方、妊娠中の方にも使用できます。

iv) 抗CGRP抗体、抗CGRP受容体抗体

2021年、抗CGRP抗体薬(エムガルティ、アジョビ)、抗CGRP受容体抗体薬(アイモビーク)が新たに保険適応となりました。
これらは前述の片頭痛の原因物質と言われるCGRPを無力化したり、CGRPを受け取って症状を起こす受容体をブロックして片頭痛発作を軽減させます。
残念ながらこれらは飲み薬ではなく注射ですが1ヶ月に一度の皮下注射で有効とされます。
また非常に高価ですので保険を使わないと大変です。
保険が使えるためには片頭痛の確定診断がついていることは当然として、既存のほかの治療を行っても効果が十分でないなどの条件を満たす必要があります。

当院での抗CGRP抗体薬(エムガルティ、アジョビ)の流れ

当院では現在エムガルティ、アジョビを導入していますが、初診時からは投与せず、MRI等で二次性頭痛を除外した上で、既存の治療を行い頭痛ダイアリーをつけていただき、患者さんとよく相談した上で抗CGRP抗体薬を投与することとしています。
よろしくご理解のほどお願い申し上げます。

抗CGRP抗体薬(エムガルティ、アジョビ)の効果

  • 頭痛の回数を減らし程度を軽くする
  • 急性期治療薬の効き目が良くなる
  • 日常生活の支障が軽減する

抗CGRP抗体薬の投与方法・費用

エムガルティの投薬方法・費用

初回に2本、以後は1ヵ月間隔で1本注射します。
※初回のみ2本投与となります。

3割負担の方で初回投与時(2本)約27,000円。
2ヶ月目以降(1本)約13,550円/月です。
<令和4年4月現在のエムガルティの薬価をもとに計算>

アジョビの投薬方法・費用

通常、成人にはフレマネズマブ(遺伝子組換え)として4週間に1回 225mgを皮下投与する、又は 12週間に1回 675mgを皮下投与する。

225mg 1筒
41,356円
  • このほか、診察料や検査料などの医療費が別途かかります。

副作用

  • 注射部位反応(痛み、発赤、かゆみ、内出血、腫れ)
  • 皮膚のかゆみ
  • じんましん
  • 発疹

まれな副作用として、重篤な過敏症が起こることがります。重篤な過敏症を疑う症状があらわれた場合は、受診日をまたず当院にご相談ください。
その他、気になる症状があらわれた場合、当院にご連絡ください。

頭痛ダイアリーをつけていただくことを
お願いしております

厚労省ガイドラインを遵守するため、頭痛ダイアリー(記録)はつけてください。
特に、痛みが辛いと感じた「片頭痛」の日数は最低限記録してください。
痛みの強さも記録して頂くと、よりの判定がしやすくなります。

投薬の継続・中止について

本剤投与中は経過を十分に観察し、4週間に1回投与の場合は本剤投与開始後3ヵ月(3回投与後)、12週間に1回投与の場合は本剤投与後3ヵ月(1回投与後)又は6ヵ月(2回投与後)を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮してください。
またその後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減等により日常生活に支障をきたさなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮してください。

なお、日本人を対象とした臨床試験において、本剤投与の15ヵ月を超える使用経験はありません。
エムガルティの場合、3カ月空いてしまったら、初期投与量(2本)からの再開です。
アジョビは12週間に1回、3回分を注射するというやり方も可能です。
詳細は当院にご確認下さい。